浄土宗 西運寺
一切唯心造 ~全ては人間の心が造り出したもの~
一切唯心造 ~全ては人間の心が造り出したもの~
ご住職 増村 晋也 様
<浄土宗> 快楽山 西運寺 檀信徒会館新築工事
大分県佐伯市 平成二一年竣工
桁行10間・梁間7間
木造入母屋造 瓦葺屋根 玄関は入母屋造妻入
私たちは親しみを込めて客殿と呼んでおりますが、飛鳥社寺には檀信徒会館を建立していただきました。客殿は本堂へお参りする前に心を落ち着け、身を清める役割をもっております。決して疎かにはできない大切な場所です。
自分の代で建てるからには冠婚葬祭に役立つだけでなく、台風や地震などの災害時に避難所となる良質な客殿にしたい。お檀家様をはじめ、この町に暮らす次の世代へ、最善の形でバトンを渡したい。そのような想いから客殿建立を決めました。
私の考える良質な客殿の条件には、次の三つがありました。長い年月に耐える建物であること。 国産の材料を用いること。お寺全体の配置や大きさを考えて建物の外観・美観を整えること。飛鳥社寺はこれらの条件に真摯に向き合い、見事な客殿を建立してくれました。
世の中の経済状況が厳しくなると、見積りの数字にとらわれて工事先を決めてしまいがちです。数字上の安さだけを優先して「お寺専門の方やなしに、地元にある建設会社に頼む方がいいんじゃなかろうか」という意見もありました。ですが、大切なことは目先の数字ではありません。建立後を見据えて物事を整えていく視野の広さが必要で、時間に耐え、祈り溢れる空間をつくることが何より大切なんです。
そのためには社寺建築を知り尽くし、腕利きの職人さんを抱える専門会社に頼まなければ無理でしょう。建立後の手入れを考えても、経験のある専門会社に頼む方が安心です。飛鳥社寺と出逢えなかったら、私が望むような立派な客殿は建たなかっただろうと思います。
仏教に「一切唯心造」という言葉があります。人間がする全ては、人間の心が造り出したものという意味です。建築物もまさにそうだと思います。どんなに技術が進もうと、肝心な部分は人間の真心がつくるんです。良いものをつくってほしいと願う人間がいて、その気持ちに誠心誠意、一流の技術でもって応えようとする人間がいる。その果てに、生命を宿す建物が出来上がるのだろうと思います。
法事などのお客様を含め、多くの皆様にお越しいただいております。おかげさまで「居心地が良い」と皆さんおしゃってくださいます。居心地が良すぎて「もう帰りとうない」というお言葉をもらったこともあるくらいです。生命が宿る建物には、人を和ませる力があるんですね。
客殿を含め、拙寺が人々の平安とともに時を重ねていきますように。私の何よりの願いです。