浄土真宗本願寺派 明正寺
人と人との縁を結び つながりが深まる場所
人と人との縁を結び つながりが深まる場所
ご住職 伊川 孝道 様
<浄土真宗本願寺派> 光明山 明正寺 本堂改修工事
山口県山口市 平成二六年竣工
正面7間・側面6.5間
木造入母屋造 瓦葺屋根 流れ向拝付
拙寺は永正八年(一五一一年)に創建、五百年を超える歴史があり、私は第十八世の住職になります。
本堂は天保十五年(一八四四年)に再建されてから、百七十年の歳月により、外柱の根元に傷みが出て、柱が傾いておりました。お寺の状況を相談したご門徒からは「今あるご荘厳がなくなってしまうのは寂しい」とのご意見もあり、新築工事と修復工事のどちらでお堂を再建するか、ご門徒の皆様と随分悩みました。
飛鳥社寺に経緯を相談し、修復工事を行ったお寺をすぐに見学させていただいたことが幸いでした。実際に修復工事が行われたお堂を目の当たりにして、見学に訪れた総代一同「この仕事ならば間違いない」と、修復工事によってお堂を再建する方向へと舵を切ることになったのです。
修復工事といっても、既存のものを活かすことは容易なことではありません。飛鳥社寺には設計段階はもとより工事途中であっても、きめ細かく要望を聞いていただきました。厚い信頼関係が築けていたからこそ、互いに知恵を出し合えたのだと思います。
私たちは、すべてにおいて恵まれておりました。ご門徒の力強い後押しをいただいたこと。契約から工事まで、計画を順調に進められたこと。事業を無事に完了して、このように安穏な心持ちでいられることを、今もなお有り難く思っております。
仏教の世界には「縁」という言葉があります。ご門徒の皆様の多大なるご協力、確かな技術のある職方、そして尽力していただいた飛鳥社寺。本堂に残した馴染み深い梁と新しく入れ替えた柱が一つに繋がった姿を見ていると、さまざまなご縁が修復工事を通じて結ばれているのだと、強く感じられます。
地域の方々からの評判もよく、お参りの方が増えました。工事が終わったお寺を見たご門徒からは「きれいなお堂になってうれしい」との言葉をたくさんいただいております。古くからある柱をみて懐かしむ方、昔の思い出を語られる方などもおり、修復工事を選んで本当によかったと思います。「明正寺」と入った軒瓦を見るたびに、ほほえみがこぼれます。
これからも地域の交流の場として、人と人とのつながりが深められるお寺でありたいと考えております。皆様にとって、気兼ねなく普段着で訪れていただけるような場所になることが、私のささやかな望みであります。