臨済宗妙心寺派 仙床寺
品格を具えた本堂にこそ 人々の心は宿る
品格を具えた本堂にこそ 人々の心は宿る
ご住職 田中 教道 様
<臨済宗妙心寺派> 青松山 仙床寺 本堂新築工事
大分県佐伯市 平成一二年竣工
正面7間・側面5間
木造入母屋造 瓦葺屋根
昭和五九年の秋、第十五世として青松山仙床寺に晋山いたしました。晋山当初、本堂は痛みがひどく、いたるところから雨漏りが起きていました。正直、本堂があと十年もつかどうか不安でなりませんでした。それくらいボロボロの状態だったのです。
このままでは、仙床寺はダメになってしまう。お寺の存続が懸かっていましたから、私は腹をくくり本堂を新築する決心をしました。檀家の方々と話をし、月々数千円の積み立てをしていただきながら、十年の歳月をかけて本堂新築工事のために準備をして参りました。
お寺の建物には、品格がなくてはなりません。品格を放つそれ相応の本堂があれば、人々の心は自ずと宿るものです。
建立するからには、品格を具えた本堂にしたい。そのためには、単に見積りが安い一般の建築会社ではなく、宮大工や腕のいい職人さんを抱えるお寺専門の会社に頼まなければ、品格を放つ本堂を建てることはできないだろうと思っていました。
飛鳥社寺との付き合いの中で特に印象に残っていることは、檀家さんお一人お一人と密にコミュニケーションをとられていた姿です。本堂を建立することの根本に立ち返りながら、「お寺は専門会社に頼んでこそいいものができる」「せっかく建てるからには、後世に見せても恥ずかしくないものを建立しましょう」と熱心に説得されていました。
飛鳥社寺の地道な働きかけを通して、檀家の皆さんとの間に自然と信頼関係が生まれていたのでしょう。建築技術だけではない、人間的な信頼関係が芽生えていたからこそ、飛鳥社寺にお願いをすることができたのです。
本堂の工事を見守りながら、この建物には日本建築の技術の粋が込められていると思いました。朝から晩まで仕事に没頭する職人さんたちの姿は、まるで禅の修行僧のようでしたし、挨拶など彼らの生活態度にも感心させられることが度々ありました。人間として尊敬できる職人さんたちに建ててもらって本当によかった。彼らの熱心な働きぶりが本堂の品格にも自ずと反映されていると思います。
平成一八年夏の台風で、お寺裏山の斜面が崩れました。不思議なことに本堂の手前で土砂は止まり、大きな被害を受けずに済みました。檀家さんはじめ、皆さんの志が本堂に宿り、仏様がお守りしてくださったのかもしれません。有り難いことです。
本堂の建立は通過点。お寺という場所が、共同体の心の拠り所となるよう精進して参ります。まだまだ道半ばです。