真宗大谷派 法讃寺
木造納骨堂の可能性を探求し、教訓を活かす
木造納骨堂の可能性を探求し、教訓を活かす
ご住職 岩坂 宏史 様
<真宗大谷派> 松江山 法讃寺 納骨堂新築工事
熊本県八代市 平成三〇年竣工
正面5間・側面5.5間 木造寄棟造(耐火建築物)瓦葺屋根
築造後、約五十年を経過して老朽化した納骨堂が、コンクリートの爆裂による漏水が顕著となり、新たに整備して後世へ引き継ぎたいという意志の下、建替えの計画を開始しました。
拙寺のある地方自治体の条例には、納骨堂に耐火構造を求める一文があり、新築で計画する納骨堂はRC(鉄筋コンクリート)造もしくは鉄骨造ということを自明の理として計画を進めておりました。
計画の途中、突如熊本を震度7 の揺れが襲います。地域によって被害の程度に違いはあるものの、各地の宗教施設も甚大な被害を受け、堅固であるはずのRC造は壁一面にひびが入って崩れ落ち、鉄骨が飴細工のように曲がっていました。倒壊を免れた建物を見ると、修復可能でありそうな木造とは対照的に、もはや修復不可能な状態となっているRC 造や鉄骨造を目の当たりにしたことが、強く印象に残りました。
この経験を契機に、拙寺の納骨堂をどう考えていくべきか、探究し始めたのです。木造も伝統工法だけに傾倒した考え方ではなく、現在の建築基準法に沿った木構造で納骨堂建築の可能性を模索していたところ、拙寺と同市内にあります光林寺様の納骨堂を飛鳥社寺が手掛けており、見学を兼ねてお伺いしたことでご縁が結ばれました。
これまでの経緯を飛鳥社寺に相談したところ、木造耐火建築物の仕様に準じて設計施工を行うことで、木造でも自治体の認可を受けられる工法を提案していただきました。これにより納骨堂を木造で建立することを決心し、飛鳥社寺にお任せすることとなりました。
特殊な工法ゆえに意匠上の制約がありましたが、飛鳥社寺は施主の思いを深く汲み取り、細部に至るまで創意と工夫で乗り越えていただき、震災を教訓として現代的な工法と伝統的な工法を組み合わせた木造耐火建築物の納骨堂が完成しました。
また、飛鳥社寺は建築に関わる業務は勿論のこと、納骨堂経営に関する関係官庁との協議交渉、改葬、納骨堂抽選会の準備に至るまで、納骨堂に関するあらゆる業務に協力していただきました。これはお寺にとって大変有難かったことで、日々の法務をひとつも疎かにすることなく、粛々と計画を進めることができたことを感謝しております。
新しい納骨堂は自然光を多く取り込んでゆとりある空間になっており、木造ならではの温かさを感じることができます。亡き方を偲び、再会できるような雰囲気をもった納骨堂となり、加入されたご門徒方も大変喜んでおられます。そのご門徒方の声や笑顔が、お寺を預かるものとしての一番の喜びです。