曹洞宗 永国寺
お参りの絶えない 昔ながらの寺でありたい
お参りの絶えない 昔ながらの寺でありたい
ご住職 紫安敬道 様 , 前住職 紫安達純 様
<曹洞宗> 蓬莱山 永国寺 本堂新築工事
熊本県人吉市 平成二九年竣工
正面6.5間・側面8間
木造入母屋造 瓦葺屋根 流れ向拝付
蓬莱山永国寺は、応永一五年(一四〇八年)、相良氏第九代前続公の開基により、実底超真和尚が開山、創立しました。大本山総持寺の御直末であり、現在の住職で四〇代になります。開山実底和尚が描いた幽霊の掛軸が寺宝として伝えられており、地域の皆様からは親しみを込めて「ゆうれい寺」と呼ばれています。
西南の役の際には、西郷隆盛が寺内に本営を構えて三十三日間在陣したとあり、人吉市街戦で往時の本堂は全焼。戦火を越えて明治二四年に再建された本堂には、地元の家屋を解いた部材が多く用いられ、民家の形式に近い建物でした。それでも百二〇年余りの年月を持ち堪え、 誰が見ても柱や梁にまで傷みが進んでいることがわかる状態となっていました。
ほぼすべての柱や梁を取り替える必要があるため、改修工事ではなく新築が望ましいとの調査結果を受けて、お堂を新築で計画することとなりました。その際に当寺の名を冠した風致地区に係わる条例があることを知り、本堂の高さが規制される可能性があるという難しい問題に直面しました。永国寺に相応しい伽藍で在りたいとの施主の思いを酌んで飛鳥社寺には行政と協議をしていただいたことで、十分に風致に配慮をした計画であることが特例として認められ、その後も安心して計画を進めることができました。
時を移さずに進捗していく中で、お寺の流れを止めないように取り計らいいただき、社寺専門会社の見地から頂く提案に、我々が疑問に思うことがありませんでした。お堂を広々と利用するために、収納を多く設けたいなどの希望はありましたが、こちらも思い描いていた以上のものを準備していただきました。
工事中の一大事で忘れてはならぬことがあります。平成二八年四月、熊本を中心に九州全域が未曾有の事態に遭遇しました。当時のことは記憶になお新しく、今も憂き目を乗り越え、また受け入れながら復興の道を進んでおります。その最中においても、飛鳥社寺には工事を粛々と進めていただいて、無事竣工を迎えることができたのは本当に有難いことです。
竣工後の開眼法要で本尊様をお向かえした際、ひとつのお堂が本堂へ変わったことを実感するとともに、これで孫子の代まで大丈夫だと胸が軽くなる思いがしました。訪れる方からも高い評価をいただいており、山門、鐘楼門、そして新しい本堂が一直線上に並んだ美しい景観に、私たちも非常に満足しています。
日頃より門前からでも手を合わせていただき、一年中お参りの絶えないお寺ですが、今後も地域の方々に気兼ねなく訪れていただけるような、昔ながらのお寺でありたいと考えております。